HOME > 会員紹介 > 生産農家

会員紹介

生産農家

DSC_7979.JPGのサムネイル画像

古くは「下野(しもつけ)の国」と呼ばれた、栃木県。「け」は「穀物」を意味し、五穀に恵まれた豊かな土地とされていたようです。関東ローム層を黒ボク土が覆った水はけのいい土地、冬は日照時間が長く梅雨でも長雨が少ないといった気候条件は、米や大豆はもとより、小麦にとっても適地適作。昔から小麦栽培が盛んでした。

そんな栃木県で、粘弾性が高くパンやお菓子づくりに最適な国産小麦の新品種「イワイノダイチ」を生産しているのが、栃木県栃木市藤岡町の早乙女正司さんと渡邉正行さんです。

品質については、国産小麦だって負けない!

DSC_8037_2.jpg

現在、早乙女さんは約12町歩(東京ドーム2.5個分)、渡邉さんは約18町歩(同4個分)の広さの畑で、毎年小麦を作っています。

同じ畑で同じ作物を作り続ける「連作」ができない小麦は、2〜3年毎に違う畑で栽培されます。

「栃木県は二毛作の北限で知られていますが、雨の多い年は明らかに質や収穫量が落ちるほど、小麦は水分を嫌います。乾燥した土がいい小麦を作る。だから私たちは水田にはせず、二毛作にするときは大麦と大豆を栽培するなど、小麦を最優先にした畑づくりをしているんですよ」(早乙女さん)

 小麦の種まきは11月。空気も畑も乾燥した数日で種をまきます。

「小麦の生育を見ながら、12月下旬から3月にかけては麦ふみをします。一般的には2〜3回ですが、私たちの場合は小麦がしっかりと大地に根を張るよう、3〜4回ほど麦ふみをしています」(渡邉さん)

 こだわりの栽培法のもとで成長した小麦は、6月に収穫されます。

「品種改良によってモチモチとした食感がある『イワイノダイチ』が誕生したことで、私の作付面積も収穫量も、就農した約40年前に比べ10倍以上になりました。市場では輸入小麦に圧倒されていますが、国産小麦だって負けてはいません」(早乙女さん)

「麦わらぼうしの会」の活動が大きな励みに

DSC_8060_2.jpg

日本国内で流通する小麦のうち、約8割が輸入品です。国産小麦はわずか2割でしかなく、なかでもパンやお菓子づくりに用いられる強力粉や中力粉については、長年「国産小麦より輸入小麦のほうが適している」と言われてきました。

ところが今は、国産小麦でも味や使い勝手で輸入小麦にひけをとらない新品種が続々と開発されています。そんな国産小麦の普及に取り組む「麦わらぼうしの会」について、「とても大きな励みになっています」と渡邉さんは続けます。

「私たちは、いい小麦が収穫できるよう栽培法にもこだわっています。ただ、これまでは収穫された小麦がどんな人たちの元へ届けられているのか、知る機会がなかった。それが『麦わらぼうしの会』の活動がきっかけで、私たちの作った小麦を使って麺づくりをしているラーメンやうどんの店が身近にあることを知りました。店に『栃木県県産小麦100%』の袋を飾っているところもある。よし、俺たちもがんばろうと思いますね」(渡邉さん)

“間違いのない”小麦を、消費者に届けたい

畑と生産者

2008年から5年間、早乙女さんと渡邉さんは、『麦わらぼうしの会』の活動の中心となる笠原産業(株)とともに、農商工連携事業に取り組みました。農商工連携事業とは、農林水産省と経済産業省が農林水産業者と商工業者等が連携して技術や特徴を活用した先進的な取り組みを「農商工連携88選」として認定するもの。早乙女さんと渡邉さんは、イワイノダイチの粘弾性をさらに高め、質量ともに向上させようと、試行錯誤したそうです。

「施肥のバランスを考えたり、排水がよくなるよう畑の形態そのものを工夫したり、小麦の種まきの感覚を広げてやったりと、毎年いろいろとやりました。今年の小麦も品質がよく、5年前に比べ収量が上がっているのは、その成果だと思います」(早乙女さん)

 日本の農業、そして国産小麦の未来は、TPP交渉の行方もあり楽観視はできない状況にあります。

「それでも私たちは、“間違いのないもの”を消費者に届けるために、小麦を作り続けます。『麦わらぼうしの会』は、そんな思いも広めてくれるものではないでしょうか」(早乙女さん)